月下星群 〜孤高の昴

    “きこえない、きいてない”

       *原作のネタバレを含む作品です。
        それと、書いた人の希望的妄想色も相当に濃い出来です。
        そういう傾向の作品には接したくないという方は、
        自己判断でお避け下さい。
  


ここまでだって、順調にとは到底言いがたい航海中ではあって、
色んな障害にぶち当たりながら、
それでも日々着実に強くなりながら、前へ前へと進んでいたものが、

 「だから こりゃ何なんだっ、こんのホロホロ女っ!」
 「クマシー〜〜〜vv」

シャボンの島での とんでもねぇ状況ん中、
海軍と衝突って事態のただ中にあって、
七武海の強わものと当たっちまった俺たちで。
そいつのワケの判んね悪魔の実の能力で、
どうやら どっかへ飛ばされちまったらしくって。
船長以下、
皆から引き離されてるっていう、何だかよく判らない状況下。
意識のないまま辿り着いたらしい場所には先客がおり。
それがこの、

 「うるっさいなぁっ。
  大体、もう動こうってのが虫が良すぎんだよっ。」

時折 鉄火肌な言い回しが飛び出すものの、
その風体はやたらピラピラしてやがる
チャラチャラした女で。
こんなでも一応は、
あのゾンビだらけのスリラーバークで、
三巨頭の一角を張ってやがって手練れ。
でっかい武器を振り回すでなし、
切れ味のいい得物を操るでもない、
まさかまさかに本人が怪力だってんでもない、
見るからにただの女だが、
人から気力を吸い取るっていう、
ややこしい幽霊を操る厄介な力を持っていやがって。
そんな奴がいるところへ、
何でか知らねぇが飛ばされていた俺だったらしく。
満身創痍だったもの、拾い上げての手当てをしてくれたようなのだが。

 ……包帯までは良い。

つか手当てしてくれたたぁ ありがてぇこったと、
敵ながら感謝したって良いくらいだが、
その上から着ぐるみみてぇな よー判らんギプスで固めやがって、
何考えてやがんだ、このアマっ。
着せられてる内側からはよく見えねぇが、どうやらクマ型ンなってるようで。

「だ〜〜〜っ、だから馴れ馴れしく寄りつくんじゃねぇっ!」

があっと怒鳴りつければ、
女々しい姿に合わせ、
『やぁだぁ、怖いぃ』と怯むかと思や、

「うっせぇなっ、そっちこそ大人しくしてやがれっ、
 でないと治るもんも治らねぇぞっ。」

姿に似合わぬドス利かせて脅しやがる、性
(たち)の悪さだったりし。
あまりに侭ならねぇと例の幽霊叩き込みやがるから、
ますますと手に負えねぇ。
グランドラインで幅を利かせようってなると、
このっくらいは得体が知れねぇといかんのだろう。
こちらは大怪我負ってたってその上へ、
こんな仕打ちまで受けてた煽り、
身動き取れねぇまま“抱き枕”扱いされてる現状で。

「睨むくらいじゃあ利かねぇし、お前、剣士なんだろ?」

残念だったな、俺にはそういうのは効かねぇよと、
生意気にも高笑いして見せやがる。
くっそ、確かにこいつには、
手出しする前に幽霊攻撃されて、
結果 跪
(ひざまづ)くしかねぇって相性の悪さだ。
こっちがそんな腹の裡
(うち)になんのは、
これまでの前例でもあって判ってやがるか、
ほろほろほろほろ…と高笑いしやがって。

 「それと、俺はベローナってんだ。
  ホロホロ女なんて呼ぶんじゃねぇっ」

 “…だったら、そのややこしい笑い方を何とかしろ。”

言っても詮無いと、さすがに学習したもんで。
正しくの腹立ち紛れ、
強がり半分にケッと鼻で嘲笑ってやりつつも、

 “………今のって。”

何だろ、この既視感はと。
胸元掠めた何かへと腹の底がむずむずする。
いや、見たもんへの感慨じゃなくて、
(実際、今 見えてんのはムカつくピンクの頭だしよっ)

  ちらっと触れて消えてったそれは、
  何げに聞こえた文言
(フレーズ)への聞き覚え。

此処は そもそも荒くれの世界だ、
生意気な口利きは、海賊じゃなくとも常套で。
でも そういうんじゃあなくての、何てんだろう。
サラッて聞き流して来た、軽い言い回しの……

  『効かねぇな、ゴムだから♪』

   …………………あ。

それが全ての腕っ節じゃあ勿論なかったが、
それでも打撃関係の衝撃は、
鉄砲でも大砲でも 突き刺さることなくの弾き返せた
我らが船長の悪魔の実の力。
痛ささえないほどに“効かねぇ”と、
いつだって不敵に言ってたあいつだったが。
あれってホントに、

  露ほども痛くはなかったんだろか

ダメージはなかったらしいが、モノによっちゃあ
そうそう、ナミに殴られると立派なタンコブ作ってなかったか?
愛の拳は痛いもんだなんて、
奴の爺ちゃんだっていう海軍中将も言ってやがったしな。

  けど、よ

どんな窮地でも背中を向けない、そんなところはようよう判るし、
それは恐らく そんな能力があるからって事へ、
乗っかってたからじゃあなかったと思う。
片意地以上の意気地だったり、
強がりだったり…ってんじゃなく。
例えば、自分へはどんな誹謗を並べられても柳に風だったあいつが、
仲間の窮地へは直撃受けたみたいに苦々しい顔になってて。

  真剣本気な真顔になるだけの怒りを生み出す根源
(みなもと)

あれは只なんねぇ痛みを感じたからだろう。
無論、わざわざ言うこっちゃあないけれど。
アーロンパークへ乗り込んだときも、
アラバスタへ立ち寄ったときも、
お気楽な構えの陰で、仲間の痛みをちゃんと受け止めていやがった。

  そうなんだよな、
  人の痛みが判らねぇ奴じゃあねぇんだよな。

ダメージなんて受けないと胸張れるのは、
ピンシャンしてることへ相手が意外に思うっての以上に、
痛いってのが辛いってことを、ちゃんと身に染ませて判ってるから。
口惜しい想いもさんざんしていて、
歯痒い想いに胸を焼いた覚えがあって。
そんなでなければ、怒髪天突く怒りは煮えない。

 “…こいつはどうだか知らねぇがな。”

叩かれたら痛いもんだってくらいにしか、思ってねぇんじゃないか? ああん?

 「な、何だよ。人んこと、そんな眇目で見てんじゃねぇよ。」
 「うっせぇよ、このベランダ女。」
 「べ…ベランダぁ?」

  さっき自分で言ったじゃねぇか。
  ちが…っ、どんな耳してやがんだっ。ベローナっつっただろがっ!
  どっちでも変わんねぇよ、ベロベロ女。
  ううっ、違うもん〜〜〜。
  だあ、泣くなっ鬱陶しいっ!


ともかく、とっとと此っから脱出しねぇとな。
船へ戻るんなら、
あのおっさんのビブルカードが向いてる方を目指しゃあいいんだ。
こんなところでウダウダしてる場合じゃねぇ。

 「クマシー〜〜〜vv」
 「てぇい、懐くなっ!」


 ………は、早く戻れれば良いねぇ、うん。






   〜Fine〜  2010.04.22.


  *タイトルつけるのが相変わらず苦手です。
   よっぽどのこと
   “遥かなる君の声”にしたろうかとか思ったんですが、
   別のお部屋の大長編と同じになってしまう…。

  *それはともかく。
   やっと終わりましたね、緊迫の戦いが。
   まだ何とはなくくすぶったままのアレやコレやがありますが、
   今はただただルフィに回復してほしいです。
   色々と打ちひしがれる要素ばかりが待ってよう“現実”ですが、
   皆の闘志や元気の源でもあるのも あなたです。

   ああでも、これってまたまた
   あなたへの“おんぶに抱っこ”になるのかなぁ。
   ホントは他の皆に負けないくらい、
   辛い目だって寂しさだって山ほど負っているのでしょうに。
   それを全部乗り越えた上で、
   ああまで爽快に笑っていられたあなたなんでしょうからね。

   ……ということをつらつらと思ってた割に、
   何だかふざけたものを書いてしまって すいませんでした。
(うう)


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